minaは余生を全力で楽しむことにした。

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創作小説『僕の日々』③

【雨宿り】

 

春休みもあとわずか、新学期を目前に控え浮かれ緊張している友人たちを思うと哀れにもなる。きっと彼らは春休み中にあったあれこれを自慢したり、新しいあれこれが、などといった話を延々と聞かせてくるに違いない。

僕はといえば、わずかな休みを今日は軒下で満喫中である。

しとしと、ざぁざぁ、時間で雲も雨足も変化を繰り返し、時に雷のファンファーレが鳴り響く。遠くで何か工事をしているらしい、時折ガガガ、ガンッと何かを穿つような音がする。雨の日でもご苦労なことである。

軒先から落ちる雫が水たまりをつくり、ぽちゃんぽちゃんと音を重ねていく。庭の木蓮はじっと雨が止むのを待つように蕾のまま静かに佇んでいた。

 

ああ、きっと今日であの満開の桜とはしばしの別れとなるだろう。桜は青々と葉を茂らせ暑い夏を過ごし、穏やかな秋に葉を色づかせ、寒い冬に葉を落とす。そして、また来年の春に花を咲かせてくれるまで。僕の夢はまた一年待たねばならないということである。

 

寂しく思っていると、にゃぁん、と小さな生き物の声。おや、猫が濡れるのを厭うて逃げまどい、迷い込んできたようだ。人に慣れているのかあまり恐れず近づいてきて、軒下にちょこんと座り込んだ。雨宿り仲間の誕生である。白い毛に、赤い目、アルビノだろうか、初めて見る猫だ。こんなに目立つ姿を覚えていないはずがない。

怖がらせないように息をひそめ、努めてそちらを見ないように庭を見る。

しとしとと雨の音は静かに僕の心を癒す。肌は少し冷えるが、小さな生き物の気配もありなんだか温かく感じる日だ。

 

もうすぐ庭には紫陽花が花咲く準備をはじめるだろう。先の楽しみまで見つかってしまった。何てことない一日を色づかせてくれるそれらに、僕は今日も有り難く感謝を捧げて身をゆだねるのであった。